定着するか活躍するか
転職の面接官は、転職者が「定着」するかどうかと「活躍」するかどうかをチェックしています。
「定着」するかどうかは、自分の指向性とマッチする仕事や会社を明確にして、志望動機を具体的に伝えられるかどうかや、現職の不満や失敗を反省し、次の会社選びに生かす視点を見せられるかどうかで判断されます。
1年未満で転職する人は、「どんな理由があっても同じく早期に転職しちゃうんじゃない」というふうに疑われがちです。会社としては、せっかく人を採用するために書類をチェックしたり、面接官をアサインするんど手間ヒマやコストをかけているわけですから、採用した人が早期に辞めてしまうというのは大きな損失です。
そのため、「すぐに辞めないか」と思われないためには、自分の指向性をはっきりさせた上で、それとフィットする仕事や会社や環境というのを明確にした上で、具体的に言語化できているということが重要なポイントです。
その上で、受けている会社がこの要件にフィットしているからといった形で志望動機を伝えられると、さらに面接官としては、「この人であれば、そのような環境というのは満たしてあげることができそうだから、長く働いてくれそうだな」というように定着性の評価が上がります。
自らの働きかけも大切
また、自分の指向性とその会社の環境がフィットしなかったとしても、自らフィットするように働きかけをして改善行動を行ったかどうかということも重要です。
例えば、「マーケティングの仕事をしたかったけれど、組織の問題でどうしてもできなかった」というような物理的なミスマッチによる課題であったとしても、それを入社する前に理解できていたかどうかは別として、大人である自分が自分の意志で選んだ会社をすぐに辞めてしまうというのはどうなのか。
「自分がした意思決定や周囲に対する責任に対して軽い人だから、やっぱり定着するかどうか不安だな」と疑われてしまうわけです。
面接官に納得してもらうためには、自分がその状況をよりよくするために行動してきたこと、それでもどうしてもうまくいかなかったという理由をきちんと説明する必要があります。
次の会社選びに活かす
さらに定着するかどうかの観点ですが、自分の指向性や価値観にミスマッチする会社を自分の選択で選んでしまったわけですから、会社選びの段階での失敗を反省し、次の会社選びに生かす視点を見せる必要があります。
誰かに入社を強制されたわけではなくて、自分で選択し意思決定をした会社ですから、「ミスマッチが起こり得ることが分かっていたんです」ということでは済まされません。
それでは自分が入社する会社に対して情報収集が甘かったりとか、意思決定に対して軽はずみであるということを言っているに過ぎず、自分の無能さをアピールすることにしかなりません。
自分の責任だと思う
あえて極端なくらいの完全自己責任の姿勢に徹するくらいがちょうどいいです。例えば先ほどの例で言うと、マーケティングの仕事ができなかったのは会社のせいではなくて、きちんとその会社の仕事内容だったり組織体制というのをリサーチせずに会社を選んでしまった自分の責任であるというようなスタンスで捉えます。
そして自責の念で振り返ってみたときに、自分の選択の間違いだったりとか、給与や有名ブランドに目がいってしまうというような自分の思考のクセに気づけたのであれば、その現状の分析だったりとか、自分の反省の気持ち、あとはどうやって繰り返さないように改善するかというようなことを企業にきちんと伝えるようにしましょう。
そうするとこの人は課題の設定だったり原因究明をしっかりやって二度と同じ失敗を踏まないように次の改善策をちゃんとやる人だというふうに面接官も安心できます。また素直に自分の非を認めてきちんと改善に取り組むというスタンスも好印象で一石二鳥です。
不満を吐き出さない
しかし転職者というのは現職の不満を持って転職活動を始めることが多いので、現職に対して感情的になっていることが多いです。そうした状況ではどうしても会社批判的なスタンスになってしまって、自分は被害者だったりとか、実績主義的に捉えることが難しくなってしまいます。
そのため、転職エージェントだったり、客観性をしっかり持った友人知人などに相談をしてみて、冷静な状況で自分の状況をフィードバックしてもらいましょう。そうすることで意外と冷静になれて、一方的にその会社が悪いというわけではないことに気がつけたりします。
未経験の仕事へのチャレンジは要注意
尚、未経験の業界だったり職種にチャレンジするときも注意が必要です。「やったことないことをやりたい」と言っている人ほど信用できないものはないからです。
やったことがない人がやりたいと言っている仕事というのは大体が良いイメージや憧れを持っていて、いい部分ばかりを見ていることが多く、ミスマッチや定着の懸念をされる原因になっています。
そういったイメージは感情から来ていることが多いので、それを仕事として責任を持ってやらなければならなくなったときに、その仕事の大変さとのギャップに耐えられず、投げ出してしまうことが多くあります。
そういう意味では自分が目指す仕事について、いい面だけではなくて悪い部分も着目した上で、それでもなおやっていきたい理由をしっかり持っておく必要があります。
そしてその仕事に就くこと自体を目的化せずに、この仕事に就けた前提でその後どんなことを探求していきたいか、そこまで語れると良いでしょう。
例えばwebマーケ業界に未経験で転職したいと考えた時に、webマーケ業界に就きたいではなくて、webマーケターとして将来的に地方の名産品とそれを求めるユーザーをマッチングするような仕組みを作りたいと言ったところまで具体的に考えておきましょう。
そこまで具体的に語らないと未経験の仕事にチャレンジする意欲や覚悟という観点では説得力を持ってアピールすることは難しいでしょう。
活躍できそうかどうか
二つ目は活躍です。面接官目線でまず一番活躍されそうだと思われるのは当たり前ですが、全く同じ業界職種の実務経験やスキルを持っていてかつ、そこで高い実績を出しているということであれば活躍しそうだと思われるでしょう。
いわゆる即戦力と言われるもので、転職市場において同業界、同職種の経験やスキル・実績があることが高く評価されがちなのは、こういった背景があります。
また同じ業界や職種の経験があるにしても、その経験・実績というのが仕事の進め方について再現性があるのかどうかについては気になるところ。
つまりあなたの出してきた成果というのが本当にあなたの実力なのかどうか、転職した後の会社でも同じかそれ以上の成果を出してくれるかどうか、それとも今までの会社の環境が良かったのか、運が良かったのか、たまたまできたことなんじゃないかというような視点があります。
環境や運ではなくて自分の創意工夫によって成果を出してきたこと、さらに一度だけ成果を出すのではなくてその成果を何度も再現できるようなことを工夫して仕事を進めてきたということを具体的なファクトや数字を交えながら論理的に伝える必要があります。
簡潔に論理的に答えられるか
他には、面接官視点でコミュニケーション視点というのがどうしてもつきまといます。面接の受け答えやコミュニケーションによって印象や評価が変わってしまいます。
これは簡潔にそして論理的に答えられるかどうかが重要になってきます。また特定の仕事において活躍している人というのは淡々と仕事をこなしている人というよりは、人よりも深く探求したり、数をたくさんやっているというような事実があります。
その人がその仕事をやる上での動機づけが明確であることや、個別効率を高める工夫をすることが非常に重要になってきます
なぜその仕事をやっていきたいのかについて一般論ではなく具体的な理由や原体験を紐付けて話すことができる人、そういった部分を見て面接官は活躍しそうだと判断しています。
またその仕事に就いた前提でより長期的なビジョンを持っている人というのはその仕事をずーっと永続的に探究してきそうだなというような期待が持てるのでさらに活躍が期待できそうだというような形で評価が上がっていきます。
他にも企業の面接官としては、プレイヤーとしての活躍だけではなくて、その後のマネージャーとしての活躍も含まれていると思います。
会社としても将来的にはチーム単位で成果を出してほしいというようなニーズがあります。そういった観点で長期的にはマネジメントだったり人の育成に興味があるかどうかという点が非常に気になります。
特に長期雇用を前提として人材を募集しているような会社においては、人の育成やマネジメントに興味があることや経験があるということはアピールになります。
謙虚さが大切
最後に活躍しそうかどうかを測る上で意外と意識されていないこととして、謙虚であったり、チームワークを大切にするということがあります。
今まで活躍してきた人が別の会社に転職すると活躍できなくなるケースがあります。チームや人との相性が合わないので、その人本来の実力を発揮することができずに機能しなくなってしまうということが起こるからです。
その人がいかに優秀でスキルが高かったとしても、大体の仕事というのは一人で完結するものではなく、チームで成果を出すことが多いんです。
しかし能力や専門性が高い人ほど自分に自信があって新しい職場に入っても傲慢だったりとか謙虚さがないがゆえに他の社員とうまく馴染めなかったり、信頼関係を築けてもらえずに結果的に成果も出せずに辞めてしまうということが起こり得ます。
環境に適応しなじめるかどうかということも成果を出すための要因としては非常に重要なことです。そしてそのことが重要であることを理解している人は、そういった人たちに対して謙虚であり、入った後に別の社員と馴染むことも重要であるということを理解していることが多いです。
企業や面接官の視点では、このように定着と活躍という2つのポイントを常に意識してチェックしています。こうした視点を理解せずに自己PRや志望動機などの個別の質問へのケース回答を準備していたとしても、効果的なアピールはできませんので意識しましょう。